衆議院決算行政監視委員会会議録

平成11224

○原田委員長 奥野参考人にお願いいたします。

○奥野参考人 東京大学の奥野でございます。きょうはお招きいただきましてありがとうございます。

 私はこういう公的宿泊施設の専門ではございませんで、専門は普通の経済学、公共経済学という分野でございますが、三年ほど前から、行政改革委員会というものが総理府の下につくられまして、そこの官民の役割分担に関する小委員会というものの参与を務めましたので、それに基づいて発言をさせていただきたいと思います。

 私の資料は基本的に三枚紙でございます。そのときの我々がやったことの一番大きなものは、「行政関与のあり方に関する判断基準」というものをつくりました。それはこの三枚紙の一番最後に「判断基準の概要」という形でまとめられております。

 基本的には、「基本原則」として三つのもの、民間でできるものは民間にゆだねるという考えに基づき、行政の活動を必要最小限にする。それから、国民本位の効率的な、効率的なというのは費用を少なくするというだけでなくて、品質の高いものをできるだけ費用を安く、国民の負担を少なくという意味でございますが、そういう効率的な行政を実現するために、国民が必要とする行政を最小の費用で行う。それから三番目に国民に対する説明責任、アカウンタビリティーを果たすという、この三つを原則といたしました。

 その「全般的な基準」として、その下にabcdというものが書いてありますが、これは追って説明いたします。

 もう一つ重要なこととして「行政の関与の可否に関する基準」というものもつくりました。これは要するに、行政が関与すべき事業というのはどういうものであるかということについて、やや経済学の専門的な言葉を使ってつくったものでございます。

これは簡単に言えば、例えば有料道路でない普通の道路のように、民間につくらせようとしても全然もうからないのでつくらない、そういうような過小供給になるような財は政府が関与してよいとか、例えば電力のように地域独占になっているようなものというのは、ほっておくと料金がどんどん上がりますから料金規制をする必要がある、そういうものですね。つまり、市場に任せておくとうまくいかないもの、そういうものを一般的に市場の失敗というふうに申しますが、市場の失敗のあるものに限って行政が関与すべきである、市場の失敗がないものに関しては行政は関与すべきではないというのが、この「行政の関与の可否に関する基準」というふうに我々が言っているものでございます。これに、ここでは大きく分けてaからfまでのものを挙げております。

 後で述べますが、私の考える限りにおきましては、こういう宿泊施設というものに関して市場の失敗があるとは考えられないというのが私の結論でございます。

 その上で、三つの大きな基準に関して、今の公的宿泊施設の持っている問題点というのを幾つか簡単にお話ししてみたいと思います。

 やや弁解になりますが、私、専門ではございませんので、にわか勉強でございますので、必ずしもここに書いてあることがすべての公的宿泊施設に当てはまるとは思いません。昨日ですか、簡保の事業団の方が説明に来られまして、いろいろ少しにわか勉強を追加的にさせていただきました。せっかく説明していただきましたので、例はどちらかというと簡保の例を使わせていただきたいと思いますが、簡保はどちらかというと説明責任をかなり果たしている方だというのが私の印象でございますので、別に私が特に簡保に悪意を持っているというふうにはとらないでいただきたいと思います。

 まず、一ページの後ろからいきます。

 説明責任ということですが、こういう公的な事業、公的宿泊施設も含めて、説明責任というものがきちんと果たされているとは余り思えません。

 とりわけ会計面ですね。企業会計とか時価会計を使ったような会計ではなくて、しばしばこういう事業では損益計算書だけが出てきて貸借対照表的なものが出てこないとか、減価償却費みたいなものがないとか、簡保の例を使いますと、交付金という、政府からただでお金が入ってくるわけですが、それも収入に入れた上で全部の収支を計算しております。しかし、本来こういう公的な事業が行うような会計の場合には、政府から入ってくるお金というものは除いて、その上で損益を出して、その上で、政府からの借り入れとか出資とか交付金とかというものを含めて、それが幾らになっているのかということを別建てで出す、そういうことをすることによって初めて、国民の税負担であるとかあるいは簡保の加入者の負担であるとかということが明確になるわけでございます。そういう形のきちんとした会計をもうちょっと、ぜひ決算委員会あたりで基準をお示しになって、こういう形で会計をつくれということをおっしゃるべきではないかと思います。

 簡保の例で申しますと、経常収支でいいますと、何か非常に大きな莫大な利益が出ているように見えるんですが、実はその大部分は政府の交付金という、ただで贈与されるお金が大部分であって、実際の収益は五千万円程度しかありません。

 それから、かなりの部分が運営が公益法人に任されていますけれども、そういうものと一緒にした連結決算、これは最近の企業会計では当たり前のことですが、そういうことをきちんとしないと、赤字がそういうところにいろいろ分かれて、そこにまた補助金が入ってくるというような形で、はっきりしないということがあります。

 それからもう一つは、それをした上で今度は分別収支をすべきです。各公的施設ごとにどれだけの赤字があるのか、どれだけの黒字があるのか、赤字、黒字が施設ごとにはっきりすれば、赤字のものはやめる、黒字のものは、後で申しますが、民営化すればいいということになるはずであります。

 それから二番目に、効率化ということ、あるいはサービスの質の向上ということ、それに加えて受益の公平ということについて、二、三お話をしたいと思います。

 まず第一に、なぜ民間で行えないのかということですが、先ほど申しましたように、市場の失敗というのがあるとは思いません。これは経済学の専門家の立場から申し上げてはっきり申しますが、市場の失敗がもし万一どこかにあるとしたらば、これは平等、公平の問題だと思うのです。

 例えば簡保を例にとれば、簡保の加入者が貧しい人であるということは全然考えられない。全然考えられないと言っている意味は、貧しい人ももちろんいますけれども金持ちもいるという意味で、簡保の受益者は貧しい人という、等号では結ばれないということです。したがって、ここに政府が介入する必要は特にないということでございます。

 それから、官業で行うことによって、民営化による競争圧力というものがなくなってしまう、したがってそれだけむだが生じる可能性が非常に強い。そういう意味でも、これを官業でやるということは望ましくないと思います。

 それから、民営化すれば透明性が確保されます。先ほどから申し上げているような会計原則というのも、当然民間であれば自動的に企業会計をしなくてはいけないはずですが、そういうことが行われておりません。

 それから、私はよくわかりませんが、しばしば言われることは、こういう公益法人であるとか事業団というようなものには天下りが入っていく。そういうことによって不透明なことが起こるという可能性もありますから、そういう意味でも民営化がいい。

 その上でさらに、例えば簡保を例に挙げますと、多分簡保の加入者の中で不平等が起こっているということです。つまり、簡保の加入者だからといって全員がこういう公的施設を使いたいと思っているわけがないのに、そういう人たちのために交付金とか政府の資金、簡保の資金が使われるわけですね。ということは、公的施設を使わない人から使う人への再分配というものが行われているわけで、そういう意味では、機会均等の原則、平等の原則というものから外れるということになります。そういう意味でも望ましくない。

 それから、税負担などでかなり優遇措置がとられておりますが、そういう意味でも民間事業者とのイコールフッティングが成立していない。そういう意味でも望ましくないというふうに思います。

 そういう意味で、最終的に、我々の判断基準でいいます、民でできるものは民に任せるということで考えるならば、万一こういう公的施設の中で黒字のものがあるならば、そもそもこれは何も官でやる必要がないわけで、民間に任せればいい。赤字の施設だったらば、これは、赤字というのはその本来の、例えば簡保だったら簡保事業というものの財政を悪化させる。簡保というのは国の事業ですから、最終的には国が連帯保証をしているわけですから、万一赤字が不良資産化して、その赤字をどこかで穴埋めしなくてはいけないということになったときには、これは民間と違って倒産させるわけにいきませんから、国民の負担になってくる。そういう意味で、不要な負担を簡保の料金値上げであるとか国民の税金という形で強いるだけであるので、私はそういう赤字施設は廃止した方がいいというふうに思います。

 その上で、そういうことをするためには、そもそも黒字、赤字を明らかにするために、先ほどから申し上げているように、きちんとした企業会計に基づいた損益計算書、貸借対照表をつくる必要があります。補助がどうしても必要であるという理由が万一あるとしても、こういうものは別会計で別建てで、お金が幾ら入っているのかということをきちんと明確にして補助を行ってほしいというふうに思います。

 そういうことで、取りまとめますと、私の意見としては、この種の事業を官が行うということは、効率性を損ない、透明性を損ない、平等性を損なう、天下り先をつくる、民業の圧迫をもたらすということで、国民とか加入者にプラスがあるとは私には思えないので、できるだけ廃止をした方がいいのではないかというのが私の意見でございます。 

 

 

 

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